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健志へ
先日は電話をありがとう。健志が決断してくれたことで、おばあちゃんはじめ、家の者みんな大喜びです。これから一緒に修業先を探すことになりますが、いずれにしろ約五年間の辛抱です。なるべく自分にとって逃げたいと思うようなところを探そうよ。あなたならどんな辛いことでも耐え抜く力があるし、きっとやり遂げてくれると思います。
先日の電話のやり取りで気になる事がありましたので、改めて私の考えを伝えておきます。それは、「仕事は生活の手段」という事についてです。確かに、人生において仕事は生活を送る上での手段です。それでは目的は何かといえば「幸せな人生を送る事」と言えるでしょう。人生の目的を「仕事」と捉えてしまうと、仕事のためなら家庭をも省みず、何でもありという事になり金儲けだけのつまらない人生になるでしょう。私たちは、生活のために仕事をしているわけですが、その仕事にもまた、その目的があります。では仕事の目的はなんでしょう。それは、「人様のお役に立つ」事に尽きると思います。どんな職業でもそれは不変の理念です。その背後にあるのは、誰でも「人から認められたい」という願望があります。認められて初めて仕事に喜びを感じ、さらに良い仕事をしようと思うものです。そうしていい仕事をする事が「人様のお役に立つ」事になるのです。戸田屋の社訓に「忍耐、技をもって人となる」という項目がありますが、菓子屋として技術を磨いてよい仕事をすること自体が「人様のお役に立つ」事になります。いわば、仕事をする上での手段が「よい技術を身につける」事になります。
技術を身につけるには若いうちからでないとなかなか大変な苦労がいります。ですから、健志は今という貴重な時間を無駄
に出来ないのです。健志が跡取りとして決断してくれ、これから修行を積むという事は、戸田屋の命運が懸かっているといっても過言ではない。せっかくおじいちゃんから受け継いだ「菓子屋」という職業、私は自信と誇りをもって受け継いでいます。早く健志にバトンタッチ出来る日を楽しみにしています。
ちなみに私の仕事は「人様のお役に立つ」人を一人でも多くつくり、世の中に送り出す事です。はじめに言いました人生の目標は「幸せな人生を送る」事。自分一人だけ幸せになろうと思っても絶対に幸せにはなれない。むしろ、自分は最後でいい。みんなの幸せが先と思えたら、たとえ、まわりの人が幸せをつかむ事が出来なくても、自分が幸せになれない道理がありません。あなたも社長になったらこの事を忘れないで仕事をしてください。
これから先の健志の益々の幸運を祈ります。
平成13年10月21日 戸田正宏
※この手紙は、20才になる息子へ送ったものです。息子健志は自分探しに上京し、フリーターとして社会に飛び込んだのですが、幾多の挫折をくり返しながら、やっと跡継ぎの決心を固めてくれました。
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