■(無題) [8月4日(月)]

暑中お見舞い申し上げます。
久しぶりの投稿です。最近はオイルショックの影響で、お客様の購買単価が減っています。無駄な買い物をしなくなっているようです。恐らくは今の状態が普通の感覚になってくるでしょう。商売のやり方を高度経済成長型から経済後退型に改めないと、淘汰されてしまいます。当店も見直しを迫られています。環境に配慮したやり方、地球に優しい経営とはいかにあるべきか、研究をしたいと思います。
何はともあれ、今月の拙句を御鑑賞ください。

葉月集   

風死して影は被爆の歩巾かな

農一日除草三昧楽しけれ

田水沸く大空に雲浮かばせて

腐草蛍となる嬰児の足に札

野馬追や初陣の武者硬直す



[99]

■(無題) [5月8日(木)]

高校2年の最後の子供が所属している吹奏楽部の顧問の先生が人事異動のため転勤する事になった。生徒はもちろん、父兄の皆も、先生の熱意や人柄に敬服していたのでショックを隠せない様子である。
その先生は化学の教科を受け持っている。授業は非常に面白く、化学が好きになった生徒をたくさん作ったが、部活の吹奏楽となると人が変わったように厳しくなり、部員を前に容赦なく罵声を浴びせたりもする。しかし、部員との絆は深く、誰一人落伍する者もいない。また、先生はひとりで何でもかんでも仕事を引き受けてしまい、始終忙しく走り回っている。マメなのである。父兄の評判もよく、皆から慕われている存在であった。
父母の会で、早速先生の送別会をやろうという事になった。急な話なのでどれくらい集まってくれるか心配していたが、予想をはるかに上回る父兄がお別れに来てくださった。
男子校なので、吹奏楽の未経験者が多く、もちろん楽器をいじるのも初めてという生徒も多いが、コンクールでは毎年、ちゃんと金賞を取るくらいに実力を付けてくる。そのご苦労たるや大変なものがあると思う。しかし、技術の向上ばかりでなく、先生は部活を通じて人間育成にも力を注いでくださった。合宿のときなどは勉強道具を持たせ、勉強時間も割いてくれる。学校の基本方針「文部両道」をわきまえた先生のご指導である。
先生は今年小学校に入学する女のお子さんがいるが、部活に忙しくほとんど遊んでやる暇がないという。なんとも頭の下がる思いである。
よき恩師に恵まれ、子どもは幸運である。


[98]

■創業60年を記念して [3月15日(土)]

今年は当店の創業60年の記念の年である。60年といえば人間にとって還暦。年が一巡し、赤子に還る年である。当店も、もう一度原点に返り、第二の創業のつもりで60年を迎えようと思っている。その節目に当店の生き様をDVDビデオに収録、製作した。その原稿があるので御紹介したいと思う。

戸田屋正道創立60周年記念DVD製作原稿

『終戦直後、足りないものばかりの両親の新婚生活。不安と希望が交錯する梅雨空のなか、実家から譲り受けた赤鍋ひとつ。闇市で仕入れたもち米を水飴に加工したのが当店の始まりと聞いています。
「信用第一」先代が口癖のように私に言い聞かせてきた言葉です。苦労に苦労を重ねて、今日の基礎を築き上げた先代の重みのある言葉です。これまでの幾多の苦難を、お客様はじめ、多くの人から励まされ、助けられ、支えられながら乗り越えてきた喜びと、感謝の心も同時に伝わってきます。
そんな先代の心を受け継ぎ、守るため、当店では、食のスペシャリスト、磯部晶策氏の提唱する磯部理念に基づいた菓子づくりをしています。磯部理念とは、
1、 安全で安心して食べられること
2、 ごまかしのないこと
3、 味のよいこと
4、 品質に応じて買いやすい価格であること
の、食品に対する4つの条件を満たし、さらに、
1、 原材料の厳選
2、 加工段階の純正化
3、 固い信念に基づく一徹なメーカーの姿勢
4、 メーカーといえども99%は消費者との立場と自覚
の、食品に携わる人の4つの原則を貫き通すこと。
磯部理念を守ることは、食の多様化や食品添加物の氾濫する昨今において、決して容易なことではありません。当店では、磯部晶策先生を中心とする勉強会「山形さらど事業協同組合」に欠かさず出席し、磯部理念の徹底化を推進しています。
原材料は店主自ら探し回り、確かな目で厳選し、伝統に基づいた技法で手間暇を惜しまず製造しています。
和菓子の命とも言うべき餡は、北海道帯広市川西農協で扱っている「きたのおとめ」という品種の小豆を使用し、総て自家製の餡を使用しています。
もち米も山形県河北町谷地の吉田正幸さんと契約栽培した「でわのもち」という品種を使用しています。そのほかの原材料も、磯部先生のご指導の下、最良のものを追求し、決して妥協を許しません。
「菓人・戸田正宏のカステラ」や、「菓人・戸田正宏のどら焼き」は店主の名前を商品名に付けるなど、責任の所在をいっそう明確にしています。
元々洋菓子職人であった当主はその技術を生かし、生クリーム大福、ティラミス大福といった「大福五人囃子」や、和風プリン「和らか」の開発など、ユニークな菓子も誕生させ、幅広い顧客層からご支持をいただいています。
明るい店内は、山形の四季の移ろいを巧みに菓子に表現し、季節感にあふれ、訪れる人を飽きさせません。
また、後を絶たない食品の偽装事件に対し、決して他人事ではないと重く受け止め、社員教育に「モラロジ―道徳科学研究所」の研修を義務付け、社員のモラルの向上に努めています。単なる販売員や菓子職人である前に、よき社会人としての自覚と責任感を培うため、毎日を振り返り、反省の誓いを習慣付けています。
今日一日、明るく穏やかに人と接していただろうか
今日一日、不平不満や人を責める気持ちが起きなかっただろうか
今日一日、両親や恩人に恩を返すつもりで仕事をしただろうか
今日一日、道徳的に生活出来ただろうか
今日一日、精一杯努力し、悔いの残らない日であっただろうか
お客様にはお返し切れないご恩を背負いながらも、感謝の気持ちを忘れぬために、これからも「信用第一」の精神を当店の柱として引き継いで参ります。
願わくば、戸田屋正道がずっとずっと皆様に愛されますように。
合掌
二代目当主 戸田正宏』

ビデオが完成したらホームページでも閲覧できるようにしたいと思っている。


[96]

■年頭の辞 [1月19日(土)]

昨年は食品業界の不祥事続きで大変な1年であった。善悪より損得を優先させる傲慢な経営者の多さに驚かされた1年であった。
謙虚さを忘れないために、私をはじめ、従業員に、仕事が終わったらその日を振り返り、静かに反省をするように習慣づけを行うことにした。
反省の内容は...

今日一日、明るく穏やかに人と接していた     だろうか
今日一日、不平不満や人を責める気持ちが     起きなかっただろうか
今日一日、両親や恩人に恩を返すつもりで     仕事をしただろうか
今日一日、道徳的に生活できただろうか
今日一日、精一杯努力し、悔いの残らない     日であっただろうか

ロッカーに貼り付け、着替えながら暗誦してもらっている。

[95]

■上品過ぎる? [1月16日(水)]

苦情があった。好転まんじゅうの餡が、いつもと違うらしい。
三代目、健志が帰ってきて8ヶ月、少しづつ修行の成果を見せてもらおうと思い、餡造りを任せたのが原因らしい。修行先で習ってきたとおり、手際よく餡を作ったのは良いが、修行先では餡に水飴や食塩を入れないのである。結果、あっさりしすぎで、風味も薄く、どこか味が抜けたようなものになってしまったようだ。
上生菓子のような、上品な味を求めるのなら、食塩を抜いたほうが断然いい味になるのだろうが、まんじゅうのように餡そのものを楽しんでいただくものにはどうやら不向きなようである。
山形は息子の修行先のような都会ではなく、田舎の風土にあった味がある。しっかりした味付けのほうが好まれるようだ。長年、戸田屋正道で慣れ親しんできたお客様、食塩を抜いただけで味の違いを見抜き、お叱りを受ける。お客様の、なんと舌の肥えた人の多いこと。驚きと共に、嬉しくなってしまった。息子と相談し、まんじゅうの餡を元に戻すことにしたことは言うまでもない。
苦情をお寄せくださいました蒲生様、有難うございます。


[94]

■食品に畏敬の念を持ちましょう [12月2日(日)]

食の信頼性がこれほどまで失墜してしまっているので、食品業に携わっている人間が誤解を受けるような発言は控えたほうが良いのだろうが、先日のマクドナルドの賞味期限切れの野菜サラダや、スライストマトを使用していた報道を見聞し、賞味期限のことをもう一度よくよく考えてみた。そもそも野菜やトマトに賞味期限が存在することに驚かされる。
日常生活上、少しくらいしなびれた野菜やトマトは捨てることなく食する。食べられるか否かは、見た目で常識的に判断できる。マクドナルドは恐らくセントラルキッチンで処理された野菜を出荷するときに社内規定で、賞味期限を画一的に付けるのだろう。しかし、野菜類は生き物である。その日セントラルキッチンに入荷したものが、必ずしも賞味期限を過ぎたからといって、みな腐れてしまうことはない。まだ充分食べられるのに社内規定だからといって廃棄処分になるのは私は耐えられない。そこまでせずとも、現場の人間に判断を委ねることは出来ないものか。
一説によると日本人が残飯として食べ残す量はエネルギー換算で1000万食分、と言われている。一日でです。食料自給率が4割を切ったにも拘わらず、無駄な浪費をしている。
話は少し脱線するが、最近、大食いを競うグルメ番組が横行しているが、それなども食に対する傲慢な振る舞いではないかと心配している。
食品は私たちにとって命綱です。大切な食品をもっと畏敬の念をもって大切に扱わないと、いずれしっぺ返しに遭う日が来ると思っている。
食に対し、感謝の気持ちが薄れてしまっているのが原因ではないのだろうか。

[93]

■赤福失望論 [10月25日(木)]

今度の赤福事件は私にとって失望感でいっぱいである。
赤福餅が冷凍品であったこと位は驚きではないのだが(あの位の規模であれば、繁忙期の製造に限界をきたすので、冷凍をして造り置きするのは致し方ないと思っている)問題は、天下の赤福とあろう者が売れ残りを再利用したということ。もうひとつ、余りマスコミで取り上げられられていないが、原材料表示にごまかしがあったことである。赤福餅の原材料は「もちごめ、砂糖、小豆」のみの表示である。しかし、今回一度だけマスコミに表示義務違反として「糖類(ソルビット)、トレハロース」の表示が抜けていたことが判明した。マスコミが大きく取り上げなかった理由は恐らく、トレハロースのメーカーが、イメージダウンを警戒し、マスコミに圧力をかけたのではないかと疑ってしまう。
何時までも柔らかな餅や艶やかな餡は同業者として不思議に思っていたのであるが、これで謎は解けた。
当店の理念のいちばん重要な「ごまかさないこと」は、改めてよい理念であると思っている。冷凍品であれ、糖類やトレハロースを使用していたにせよ、包み隠さず正直に言えば済むものを、赤福たるものがどうしてごまかす必要があるのか、理解に苦しむ。経営者のおごりと道徳の欠如がここでも露呈した。

[92]

パスワード


[TOP][管理人] バージョン:5
作成:まやかし堂